楽し、怖しの岩登り
                    メンバー fuku、(U山岳会)M
                                               記fuku

約2年前の入会動機には出来れば岩登りも体験してみたいとの思いもあった。

が、本当にやるかは正直自分自身でも半信半疑であった。

 今年に入り何度かマルチピッチの本ちゃんルートに行った。腕がパンプするまで必死で粘りひょっとすると死ぬかもという恐怖感も体験する。こんな事は日常ではほとんどあり得ない。岩は日常的にそんな経験が「楽しめる」。この怖さとそれゆえの高揚感、大きな達成感。これが麻薬的な魅力になり癖になる。そんな岩登りの魅力の一端を知ることが出来たように思うこの頃である。前置きはこれくらいで、先日行った岩登りの紹介です。

 

長門峡切窓西壁 赤い屋根ルート 10月5日

長門峡にこんな岩のルートがあるとは知らなかった。一応ネット検索したがMの記録のみヒットした。初めてのA2があるらしい。ハングのあぶみは未体験で不安だ。トンネル前で車を止め、目の前には垂直の絶壁が迫る。とても人間が登れそうには見えない。途中にオーバーハングが天井となっているのが見える。うーーん、あれがそれか(恐)!!。歩きにくい踏み後をたどると10分ほどで取り付きとなり目の前には垂直のジェードルがそそり立つ。真ん中にクラックが走りどうやらこの弱点をついて登るようだ。

いつものようにMが取り付く。たまにフーー!っと大きな息を吐く。スムーズに登っているがそれでもかなり緊張するピッチの様だ。ジェードルを越えると少しハングした壁を越えて1P終了。

さて自分の番である。レイバックスタイルで右の壁を足で突っ張ればよさそうだが、岩は苔が着いていたりで足のフリクションは弱く滑りそうで思い切れない。しばらく苦闘するがプロテクションのスリングになんとか手が届いたのでこれを頼りに木を掴みなんとか越えた。次の少しハングした1m程の壁はヌンチャクを掴むがそれでも難しく、ロープを掴みやっと1P終了。チョンボばかりでもすでにアップアップ状態。

2Pは同じようなジェードルでクラックが走るがホールド感がどうも甘い。手を入れてハンドジャミングでなんとか体勢を維持し左へトラバースしバンドに登る。

1Pに比べると少し易しいとは思ったが、昔はA1だったのだがハーケンがなくなりフリーとなっているとの事だった。ここはフリーの方がおもしろいとはMの弁だが、自分はおもしろくなくてもA1がいい。

次はいよいよA2の登場。Mの登る姿を見ているとなんとかなりそうに思うが、実力差を考えれば安心してはいけない。今まで何度騙されたことか。

最初の垂壁はA1でこれは問題ない。さていいよいよA2の登場である。壁から1m以上水平に天井が張りだしその先あたりにボルトがある。これにあぶみを掛けぶら下がり天井外側の壁にあるボルトにあぶみを掛け乗り移らなければいけない

Mに言われレストフィフィをハーネスに取り付けてきたが、掛けようとするがこれが短かすぎたようでなかなか掛けられない。仕方ないので左手であぶみの上部を持ち右手でもう一つのあぶみを掛けようとするが微妙に届かない。しかも手であぶみを持つと足が大きく反対側に振れますます腕の負担が大きくなる。何回か挑戦したがどうにもならないので、壁のボルトからぶら下がるヌンチャクに掛ける。が、すでに腕はパンパン。ロープで確保はされているが落ちる恐怖が全身を包む。結局腕力尽きギブアップ。ロープにぶら下がり空中をズルズルと降ろしてもらう。まさに「敗退」という言葉がよく似合う姿だ。自分が登れないことでMも最後のピッチは断念となる、申し訳ないやら情けないやら。

Mによると、あぶみは「作業」とのこと。つまり岩登りのセンスというより手順、やり方をおぼえれば難しくはないとの事。なら自分でも出来るかもしれないと少し気持を立て直した。家の車庫の梁にぶら下がり練習でもするか...

案外めげないのである。

 

雌鉾岳 美しいトラバースルート10月6日

午前中の長門峡の挫折の気を取り直し23時過ぎに宇部で落ち合い一路宮崎へ。Mは長門峡のあと勤務しそして勤務終了後ダイレクトに宮崎なのである。ほんと良くやるわ、家庭はどうなっているんだろう..なんて言う資格はもちろん自分にもない。

交代で運転し、宇部〜小倉東、椎田道路、大分別府道路と使える有料は全部使い326号線経由で5時間掛けてキャンプ場着。2時間の仮眠だがほとんど眠れず。

美しいトラバースルートはグレードで見るとMには物足りないルートだろうが雌鉾初めての自分へのサービスだろう。30分で取り付き到着。目の前に写真で見た大スラブ。

不動のトップのMが登る。続いて不肖のセカンドの自分が登る。

4ピッチまではほとんど四つん這いで歩いている感じでなんなく登る。

5Pは出だし少し下がりトラバースだがこれも特に問題はない。6Pで中央バンドに出る。ここをずっとトラバースすれば長征トラバースルートとなるが今日はここから直登するルートである。

次の2PはA1であぶみを使用する。特に問題はない。Mはあぶみを使わずA0で登り頂上直下の樹林帯に出る。Mは通常この先は登らず下降路を下山するらしいが、今日は山頂まで。9,10ピッチは二の坊主と三の坊主の間の凹角を登り右壁の二の坊主のクラックを登っていく。通常2ピッチのこのルートを今回は1ピッチで登る。ルート図10ピッチ目のクラックは少しいやな感じでハンドジャミングをして手がすりむけてしまった。

岩峰の山頂は絶景。360度一望出来る。この山頂に立てるのはクライマーだけの特権、かと思ったら、反対側に登山道があった。下りは懸垂で8ピッチ終了点に降り下降路を下った。このルートならリードも出来そうな気がしたがそれは次の課題である。

 

比叡山 白亜スラブルート 10月6日

午後は比叡に移動し最近出来た新しいルートの登攀である。

ネットで調べたら宮崎の水流渓人さんのHPにそれらしい記述があった。天空への階段ルート、てっきりこれだと思い会に提出した計画書にもそう書いていた。

が、MはやはりそのHPを見てすでに登ったそうで、そして渡された目的のルート図にはZ−、Y+、Z−、...ヒエー登れるわけがない!!。

取り付きで実際の壁を見て、やっぱ無理、絶対無理と心でつぶやきながら上部に目をやるとなにやら動く姿がある。先行パーティーだ。

今年になって陶以外の岩場にも何度か行く機会を得たが他のパーティーに出会うのは初めてである。我々の声に気づいたようで互いに手を振って挨拶。

だが、これで更にプレッシャーがのしかかる。「まずい、ぶざまな格好は見せられない」。

1Pは草付きを右上するがほとんどアプローチで問題はない。だが眼下にはおそらく100mくらいの高度差で網の瀬川の河原が真下に見え既に何ピッチか登ったような高度感が感じられる。

2Pはレイバックが良く効く、が難しい。たまにヌンチャクを持ったりピンに足をかけたりでなんとか攀じ登る。いつも思うが初めてでこんな難しいピッチを良くリード出来るものである。

3PはY+なので易しくはないのだが、2Pで難儀しただけにかなり楽に感じる。傾斜も少し緩くホールドスタンスも結構ある。もちろん2Pに比べればではあるが。いつものようにちょっと苦しくなるとすぐヌンチャク持ちの、ピンスタンスありのでとにかく必死で攀じる。途中持ったフレーク状の岩は少し浮いている感じだった。新しいルートなのでまだ不安定な岩も残っているようだ。

3P終了点でMが先行パーティーに追いつく。

先行パーティーのトップ氏はだいぶ前から4Pに取り付いていてA1ルートをA0で頑張っているようだが、苦労していたようだった。続いてセカンド氏がA1で取り付く。どうやら先行パーティーのセカンド氏は自分とそれほど差はないようでホッとする。

セカンド氏が4Pを登り始めてほどなく自分が3P終了点に到着し確保点に最後の一登りと右手を掛けた一抱えもある岩がグラッ!...あっ、...次の声が出ない。ものすごい音とスピードで落下していく。先行パーティーからは見えないが事故?!と思い声があがる。下にパーティーがいたらおそらく命はない。しばらく放心状態。安定した岩ばかりの陶とは訳が違うようで勉強になった。

さて、先行パーティーに続きMがA0で取り付く。なんとスムーズな動き。速い。自分はもちろん最初からあぶみ使用のつもり。あぶみをセットする。やはり最初のハングで少し苦労する。長門峡の悪夢がよみがえるが右の壁にピンがあるのでハングでのあぶみ操作はしなくてよかった。それでもかなり時間を食う。最後のクラックもちょっといやな感じだ。

終了点にはMだけでなく先行パーティーもお先にどうぞと待っていた。狭い終了点は大混雑となった。先行パーティーはHPの主の水流渓人さんと小松の親分さんのパーティーであった。水流さんはさかんに「速いですね」を連発する。悪い気はしないが、もちろんMに対する言葉である。

最終ピッチはX+級で自分にとって易しいと言えるグレードではないのだが、2〜4ピッチに比べればなんでもない。やっと余裕のあるクライミングを味わうことが出来た。

終了点からは踏み後をたどるか懸垂で降りるかだが、左方カンテルートを50mほぼいっぱいの懸垂を三回して取り付きの近くに降りた。

見上げた岸壁はそそり立ち、ついさっき登ったことの実感がわかない威圧的な姿を見せていた。

 

当日の水流渓人さんの記事 http://www12.big.or.jp/~tsurukei/hotnews2/119hakua-slab/119.html