イグルー泊で十方山

06/1/2930 

2930Cパス)Henry(写真)、(U部)M、(やまびこ)fuku(記)

30日のみ (U部)S夫妻(写真)

 

最高標高ピークへ急登のラッセル

 冬山での危険は何と言っても寒いこと。西中国山地でも厳冬期の最低気温はマイナス10度を下回る。さらに風が加わった想像を絶する厳しい自然は一晩で簡単に登山者の命を奪い去る。

今回はそんな時の強力な武器となるイグルーの製作と泊経験を兼ねた計画とした。

 二日目のS夫妻との合流もあるので初日は水越峠から少し入ったあたりでイグルー泊の予定とし、割合ゆっくりした出発時間とした。

二軒小屋を14:00発。細かい雨が降り気分は盛り上がらない。すぐに膝までのラッセル。ワカンを着ける。しばらく行くが水分をたっぷり含んだ雪がワカンに着き足を引き上げるのが重い。再びつぼ足。今度はズボッと埋まる。結局どっちもどっちで結構難儀なラッセルが続く。西中国山地に不似合いな泊装備の大きなザックが重い。

予定の図

 

 この林道は無雪期に1回登り、積雪期に1回下ったことがあるが、積雪期の登りは初めてである。HenryMはまったく初めてと言う。

とは言え明瞭な林道を進み、峠という分かりやすい地形がとりあえずの目標なので迷うことはないはず。

 それにしても遠い。2時間近く歩いたが峠は一向に現れない。そろそろイグルー製作を考えればタイムリミット。雨の中のイグルーは、泊体験というにはあまりにも過酷なので天気予報から念の為2人用テントは持参していたが、幸い雨は止んだ。

 16時過ぎから初日の大きな目的であるイグルーの製作にとりかかる。泊地の積雪は50〜60cm。前2回のイグルー泊の時に比べ雪が少なくあまり掘り下げられそうになく、今回は少し大きくする必要がありそうだ。

 

イグルー製作

 内径は1.8m程として、それにブロック壁の厚みを加えた大きさの設営場所を丸く踏み固める。

 さらに、雪のブロック切り出し場を広く踏み固める。

 二人でブロック切り出し。一人が円内でブロック積みの役割分担。

 スーパーの買い物かご程度の大きさが目標だが、なかなかそうもいかず、不揃いのブロックとなるのはやむなし。

 3段ほど積みあがると、ここからが本番。いよいよ内側に円筒形を絞りかまなければならない。3段目の上面を45度ほど内傾するようにスノーソーで切り取る。

 以後、1段積んでは上面を整形し、次の段を積み上げる。ブロックの左右の面を整形し、最後の1ブロックを入れると石橋の構造の様に落ちることはない。

 最後に天井にくさび状のブロックを乗せればとりあえず完成。

 さらに、内部の雪を排出し内部をさらに広くし完成。

完成したイグルー 入り口はツェルトで塞ぐ

 

下図の岳人041月号の図をご覧になると良く分かると思います。図のようにきれいには出来ませんが、今回は2時間15分掛かかりとにかく完成した。

 

    

 

 さあ、お楽しみの夕食&宴会だ。イグルーはコンロを焚いても温度は上がらず、消しても下がらないので温度は一定だ。これは雪洞と同じである。とはいっても零度程度だからうぅ〜、寒くてビール飲む気にならん..。

 天井からは少しではあるが、水滴が落ちる。試しに別のツェルト取出し被ってみるとすぐに体感できる暖かさと水滴も防げるその快適さに、おぉー!と声が出る。さらにコンロを焚くと今度は瞬時に温度が上がりテントの快適さに近くなる。イグルー&ツェルト&コンロの組み合わせなら最強のビバーク環境になりそうだ。救助隊が来ても出たくない程だと皆その快適さを絶賛。焼肉をつまみにビール、焼酎と楽しい酒宴の時間は過ぎる。

 しかし、良かったのはここまで。シュラフカバーには天井からポタポタとあばら家の雨漏りのごとく水滴が絶え間なく落ちる。水分をたっぷり吸った雪と、あまり低くない外気温のせいか、3人の体温から立ち上る暖気が積んだブロックの雪を溶かしシュラフは濡れ、寒く眠れぬ一夜となった。

 

 「おーい」。Sさんの声がした。意外に早い到着に驚いたが7時に二軒小屋を出発したそうで、納得した。時刻は9時過ぎ。

 「水越峠からルート変えたの?」

「エッ???」

 この場所はシシガ谷ルートをかなり進んでいるとの事。そうか、いつまでたっても峠が現れなかったはずだ。そういえば昨日は誰もコンパスをろくに見ていなかった。なんという不覚。

恥ずかしくて穴があってもイグルーから出たくない。

 泊装備の重荷でなかなかペースが上がらないイグルー泊組を尻目に、S夫妻は先頭で快調にラッセルを続ける。昨夜降った新雪は周囲の風景を息を飲むほどの一級品に変貌させ、雪質も高度を上げるにつれ湿り雪はさらさらした感じにグレードアップし最高の冬山登山になってきた。

 

 

 シシガ谷から急斜面をラッセルし最高標高のピークへ。さらに平坦な地形を標識のある三角点ピークへ進む。


 

 吹きさらしの山頂で長居は無用。記念撮影後早々に最高点ピークに引き返し昼食。水越峠に尾根沿いに下山する案もあったが、時間、体力からトレースを引き返す。

山頂は吹きさらしで積雪は少ない

 

 イグルーの宿に再び立ち寄り(ここでアクシデント発生。詳細は宇部山岳会HP記事をご覧あれ)登りで間違えた林道のヘアピン部分に到着。

イグルー内部見学 この後アクシデントが発生した

 

 さてこの問題の場所だが、あらためて見てもとても間違うような所ではない。単に勘違いとその後の確認不足の単純ミス。道迷いは案外こんな簡単な場所で起こるのかもしれない。

 持病の腰痛で腰がだるくなり、単調な林道歩きにそろそろ嫌気がさしてきた頃、車が見えてほっとした。

 雪の状態が悪く、予定の周回ルートは半分くらいのピストンルートになったが、終えてみるとそれでも疲労の大きさが満足感へと変わるから不思議なもの。それにしても、やれやれ疲れた。

 

記 録 大雑把ですが、登り4時間半、下り3時間でした。

三角点ピーク、最高点ピーク間は線を描いた。フラッグはイグルーの場所。

 

山行後記

 痛恨のルートミス。ここまで単純なミスだと笑うしかないが、大きな事故につながりかねない内容でもあった。最近、読図力に少し自信がついてきて、「山を甘くみていた」のかもしれない。

 イグルー製作、泊は過去何度かやったが製作はどんな条件でも出来る自信はある。しかし泊技術はまだまだ。湿気対策がなかなか解決出来ない問題だ。

 

過去のイグルー関係記事

http://acyamabiko.sakura.ne.jp/USER/yama_rep/2006/iguru/index.html

http://acyamabiko.sakura.ne.jp/USER/yama_rep/2006/06yukiresq/index.html

http://acyamabiko.sakura.ne.jp/USER/yama_rep/2005/daisenyukikun/index.htm

http://acyamabiko.sakura.ne.jp/USER/yama_rep/2004/2gatu/index.htm

 初めて作ったイグルー