雪彦山クライミング |
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05/8/23〜24 M(U山岳会)、fuku
錫杖岳の予定だったが、天気予報を見て雪彦山に変更する。錫杖までなら片道12時間。雨で中止にでもなれば帰りの12時間はあまりに辛すぎるのである。 22日夕方山口を出発、雪彦山キャンプ場にてテント泊。
23日 三峯東陵一般ルート 天気は曇り。心配した雨は大丈夫なようだ。キャンプ場から沢沿いの登山道を進むとパイプのモニュメントのような不思議な形の堰堤がある。登山道をさらに進み出合 三峯のハングした難しそうなルートを横目に進むと、遭難碑がありそのすぐ横からルートになっている。これが東陵一般ルートで、ルート図ではW+、V+、V+となっている。これくらいなら、ほぼ今年初めての岩だとしても自分でもなんとかなるはずだ。しかし、目の前にある1ピッチ目は少し上がるとハング気味の箇所がありこれを乗り越すルートにピンがある。うーん、どうもてもW+には見えないのだが。 Mが取り付く。やはりハングの部分でA0となっている。それでも相変わらず流れるように動きが止まることなくスムーズに登る様はさすがだ。 次に自分だが、ハングのA0でマゴマゴし早くも腕はパンプ気味。たまらずロープにテンションを掛け休憩。再チャレンジもすぐ腕の限界。今度はハーネスにセットしたフィフィを支点に掛けレストする。何度か登る、レストを繰り返しやっと1ピッチを終了。「本当にW+?」。だが、よく見るとA0も併記してあった。 次はV+で本来なら自分でも楽勝なのだが、最初の1ピッチですっかり戦意喪失。またまたMに行ってもらう。ルートは途中から垂壁を左に乗り越える。見ていてもその部分が少し難しそうだと思ったが、自分が行くとやはり「これでV+?!」。 完全にルート図不信になり次がV+と書いてあるが信用できない。またまたMトップ。だが、今度のピッチは登ってみるとまずまず妥当なグレード表記のような気がした。 結局、自分でも行けそうな三峯で一番簡単なルートを選択してもらったにもかかわらず完全にKOパンチを食らってしまった。 この後細い稜線を通り鞍部に懸垂下降し不行岳岩壁へと進む。
不行岳南東壁一般ルート 三峯との鞍部に降りるとすぐ目の前にルートはある。これも出だしはWとなっているがやはりA0混じり。A0の場所は4〜5m登ったところの軽いハングの場所だろう。トップのMもやはりその部分はA0となった。 取り付くと、ハング部分はA0では自分には難しい。結局A1となってしまった。ここを越えると後はルート図のとおりW程度を登り終了点は頼りなさそうな細い松である。 2ピッチ目をMは少し登り、バンドを右にトラバースしルートを探す。しばらく登ったり、小さくクライムダウンしたりしていたが、ハーケンのみのあまりに不安な支点とルートが判然としないことで結局撤退となった。ルート図でV+なので難しくはないのだろうが、Mの慎重な判断は信頼感がある。
懸垂で元の鞍部に降り地蔵岳に向かう。途中懸垂で40m程を降りると遭難碑がある。チムニールートにて遭難とある。遭難碑の左手に湿ったチムニーがあるがそれだろうか。40年以上前の事故で20代の若者である。
地蔵岳東陵ノーマルルート 遭難碑から少し回り込むと雪彦エリアで一番人気のノーマルルート取り付きとなる。目の前には階段状のスラブ。これはさすがに簡単そうだ。 スラブは2ピッチで登る。最初はM,次は初めてつるべで自分。ピンが少ないのを除けばルート図どおりのV〜Wで簡単だ。 3ピッチ目はW程度のチムニーを登る。Mトップ。4ピッチはコンテで移動し5ピッチ目は大きな遭難碑のある馬の背状のピッチ。これも簡単だ。Vくらいか。 最終6ピッチ目はどこでも登れそうでいまいちルートがはっきりしないが、右のルンゼ状を登る。木で支点を取るまで簡単だが5〜6mくらいフリーとなる。ここもMトップで山頂へ。山頂でがっちり登攀の握手し下山は一般登山道を下る。修験僧の山らしく随所に鎖、ロープがある。
24日 昨日はどんよりとした曇り空だったが、今日は朝から青空が見える。雨の心配はないのだが暑さが心配だ。昨日と同じ出合から踏跡を今度は右にたどる。さらに途中から分岐するが左を行く。右を選択すればおそらく地蔵岳正面壁だろう。ほどなくノーマルルート基部に着く。
地蔵岳東陵ノーマルルート(すべり台経由) 昨日に続き再びノーマルルートであるが、途中からすべり台ルートへ転進し山頂を目指す。 1ピッチは自分がトップ。2ピッチはつるべでMトップ。3ピッチ目は自分がトップでクライムダウンしすべり台の取り付きへ。 すべり台は80°ほどののっぺりした岩壁で左にクラック部をレイバックで登るルート(W+)、真ん中に薄いステップ、ホールドがわずかにある程度の中央ルートがありこれを登る事になった。 4ピッチ目すべり台中央ルート、Mトップ。A0にたまにシュリンゲのA1混じりで乗り越えていく。相変わらず手際が良くスピード感ある。途中ピンが遠くアクロバットの様な微妙なムーブでヌンチャクを掛ける。 自分はMの様子を見て、力量差を考え最初からあぶみを出しA1主体、たまにA0混じりで行く。Mがやっとビナを掛けたところで同じ様な体勢を真似るが到底出来ない。それでもなんとかMの掛けたヌンチャクに届きヌンチャクを掛けあぶみで越える。 木の終了点で、「W+ってことはないだろう!!」とグレード表記に疑問の同意(それもそのはず、帰宅後よく見るとY+だった)。 次の5ピッチ目は最初だけ数メートルの岩登りだが後は灌木の中で簡単。6ピッチ目はノーマルルート4ピッチ目のコンテとなり後は前日と同じルート。7ピッチ馬の背を自分が、最終ピッチをMが前日と違う左側から登る。
下山は、大天井岳に登りセリ岩、さらにA3ルートの登攀記念なのか年月日、氏名などがペンキであちこちに記されていて見苦しい出雲岩などの名所を通りキャンプ場へ下山した。
山行後記 二日にわたるクライミングはヒルに血を吸われ、ハチに刺され、暑さに参ったりと色々あったが、充実したものだった。ただ、自分の登攀力のなさにはいささか情けない思いもした。クライミングのセンスは元々ないと自覚してはいるが、それにしてもやはり悔しい。これをバネにして今後も前向きに楽しく取り組んでいきたいと思う。 アルパインで必要なテクニックは多い。フリーに比べ簡単に撤退出来ないアルパインルートではとにかく登る事が一番安全な場合が多い。そんなテクニックの一つに今回はレストフィフィの有効性を体感出来た。もちろんフリー能力向上が王道で有ることは言うまでもないが、登る為の引き出しはたくさん有るに越したことはない。 遭難碑が目に付いた。いずれも20代の若者である。当時、山は若者の物だったのだ。しかし今や「きつい、汚い、危険」の3K遊びの山登りに若者の姿はなく、彼らの遭難から数十年を経て遭難碑をのぞき込むのは中高年ばかり。そんな様子を遭難碑の主はどんな思いで見ているのだろうか。生きていればみんな60代のおじさんだ。中にはクライミングを続けている人だっていたかもしれない。 |