セルフ&救助隊レスキュー(沢搬出訓練) |
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05年7月10日 参加者:fuji,bata,migita,turu,toshi,michi,yoko,koba,masa,kisa(写真),fuku(記),杣道H,T,コンパスH,宇部山岳会M。
岩や沢登りはリスキーな登山である。この難物と立ち向かうには、攻撃力だけでなく、防御力も十分備えることが必要であろう。そしてこの防衛力こそレスキュー技術ではないだろうか。 しかし、搬出を中心とするレスキュー技術は従来、救助隊訓練として行われる事が多く、搬出システムも特殊用具を使って構築していてどこか一般会員からは遠い技術として捉えられているような気がする。 しかし、本当にそれで良いのだろうか。
岩登りでトップが落下し宙づりで動けなくなった。翌日救助隊が到着したが、夜間の冷え込みで既に凍死していた。 沢登りで滑って捻挫。両側はゴルジュとなっていて負傷者には高巻きは困難。沢は滑りやすく担架移動も難しい。結局沢の中で救助隊を待つが、夕方の突然の豪雨で流され滝壺に転落。 もし、せめて安全な場所まで当該パーティーで搬出が出来てビバークしていればこんな事には.....
今回そんな思いから最小2人のパーティーでも可能なセルフレスキュー技術訓練として当初やまびこ山行部で企画した。また、県連の救助隊の沢搬出訓練とも日程が重なっていたため合同企画とし、組織レスキューの観点からチームプレイによるルート工作を含む総合訓練もやろうという欲張りプランとなった。
さて、訓練当日は残念な事に豪雨となった。とても予定の陶ヶ岳では出来そうもないので、前日U山岳会のMさんのアドバイスもあり近くの公園に出来そうな場所を見つけておいた。屋根もありロープを掛けてもまったく問題のない頑丈な梁もある。陶ヶ岳のように実際の山行に近い臨場感と迫力はないにしても、基本システムの修得にはほとんど問題はなさそうである。
想定課題は 「沢で滑り右足捻挫、同時に手を突いたとき右手骨折。負傷者を沢から登山道まで搬出を行う。用具は特殊な物は使用せず通常の沢装備の範疇。少人数パーティー」である。
1,引き上げシステム 1/3,1/5 必要用具: 1/3 シュリンゲ2,ロープ1,ビナ3(天井に吊っているので折り返しにさらに+ビナ1)。 1/5 シュリンゲ2,ロープ1,補助ロープ1(シュリンゲやロープ末端で代用可)、ビナ4(天井に吊っているので折り返しにさらに+ビナ1)。
ガルダーヒッチで一通りシステムを理解してもらった上で、ガルダーヒッチの代わりにオートブロックを使ったシステム、ルベルソを使ったシステムも説明し確認した。 実技報告 (1)1/3だと仮に全体重を掛けても一人で引き上げることはやはり困難だった。セルフレスキューの観点から2人という最小パーティーを考えるとやはり1/5システムを覚える必要がある。 (2)ガルダーヒッチのロックは確実で信頼感があるが、ロープが細いとロックしたままでロープが上がってこない事があった。 (3)オートブロックはスムーズにロープが (4)ルベルソは元々テンションがかかるとロックする機能を持った用具として設計されており、上記2つの「代用品」と違い明らかに性能が高く一番スムーズで問題がなかった。まだ、持っている人は多くはないが、わずかな重量と値段も3000円程でこれからATC、エイト環などに代わり携行を考えてみてはどうだろう。ただし、ロックを解除する技術も同時にマスターしておく必要もある。 2,チロリアンブリッジ チロリアンブリッジは吊り上げシステムを横にした様なシステムとなる。吊り上げシステムをたっぷりやった後なので理解は早い。実技では実際にシステムを構築し、安全の為、負傷者に見立てたポリタンクをぶら下げた。 また、メインロープをたるませた状態でポリタンクを掛けメインロープを張り込みながら吊る方法と張ったメインロープにルベルソとビナで1/2システムを作り、ビッグウォールの荷揚げの様に吊り上げる方法を行った。 注意点として、 (1)チロリアンブリッジは吊ることで想像以上の張力がロープにかかるので保護の為張りすぎないこと(9mm以下はダブルに張る)。 (2)張り込む為の1/3システムなどをメインロープにセットする場合、歯の突いた用具はロープ破断の原因になり使用しないこと。 などを説明した。
実技報告 (1)今回は荷が軽かった為か張り込みながら吊る方法、張ったロープに吊り上げる方法共に思ったよりスムーズに出来た。 人間の場合は、後で吊り上げるのはセルフレスキューの観点からはロープも余分に必要だし難易度が高いかもしれない。張り込みながら吊る方法の方がシステムも単純で現実的なような気がする。 (2)今回は念の為ポリタンク2個(35kg程度)で行ったがそれでも荷の重量で弛みロープへの負担の大きさを実感出来る。沢登りの場合8mm程度のロープ携行が多い為、セルフレスキューとしてチロリアンブリッジを使用する場合はなるべく斜めに張るなどロープへの負担に配慮した慎重なセットが要求されると感じた。今後の講習ではこのあたりを重点に行う事が必要だろう。
3,懸垂による引き下ろし
実技報告 (1)空中懸垂だが、梁から吊った程度の高さなので恐怖感がないためか尻込みせずチャレンジしブレーキが十分かかること、自分が背負う訳では無いことなどが理解出来たと思う。 (2)途中から1ターンから2ターンへ変更するやり方も自発的に検証が行われ、下降器の位置が手の届く範囲である必要が納得された。 (3)下降器が腰位置での通常セットと異なり、頭付近になるので特に女性は髪の毛の巻き込みに注意すべきであることも指摘した。
4,ハイキングのロープ技術 岳人6月号にあった補助ロープを使用した確保技術、懸垂下降技術を説明した。6mm程度の補助ロープでもビナとシュリンゲの簡易ハーネスとムンターヒッチ(半マスト)で十分懸垂が可能で有ることを理解してもらえたと思う。 また、安全なルートのハイキングでも道迷いなどで思わぬ状況になる可能性を考えれば、長いシュリンゲ1本、ビナ1個は個人装備、10m程度の補助ロープは共同装備として持つくらいの意識は安全登山の為には必要なことも説明した。 これらのものは登山道での簡易搬出にも使えるし、テント泊などでも利用出来る便利グッズでもある。
5,懸垂下降でロープが足りない場合の方法 懸垂は通常回収を考えてロープ長の半分の距離が可能である。2本あればもちろんこれを繋いでロープ長まで可能だが、少人数パーティーの場合軽量化を考え1本の場合も多い。しかも、沢では40m、30mなどクライミングなどに比べ短いロープもよく使用される。30mだとわずか15mしか懸垂出来ないことになる。 想定外の懸垂の必要が生じた場合、足りない部分を無理にクライミングダウンして起こる事故を防ぐ為に是非知っておいてもらいたい小技である。 また、ハイキングでの補助ロープ10m程度の念の為の装備では特に有効かもしれない。
この様な場合の方法を説明した。 1,ロープに手持ちの補助ロープ、シュリンゲなどをつなぎ片方の端をロープと一緒に持ちエイトノットなどでつなぐ。 2,繋いだロープ付近にインクノットまたは中間のエイトノットなどでロープにビナをセットする。 3,支点にロープをまわしロープに付けたビナを通す。 4,反対の末端を結び、ロープを投げる。 5,懸垂はロープのみに下降器をセットし(つまりシングルとなる)下降する。 6,回収は繋いだシュリンゲや補助ロープ側を引けばOKである。 7,懸垂可能距離は補助ロープ、シュリンゲなどを繋いだ長さの半分ほど延びる。なお、沢ではカズラなどの調達も可能で、ロープを回収するに耐える物であれば何でもかまわない。
6,自己脱出(登り返し) 岩トレなどでセルフレスキューと言うとプルージックやアッセンダーを使った登り返しの事を言う事が多い。沢でのレスキュー技術として必要かはともかく、知っておくと便利な技術である。特に自分の様に登攀力に不安があればセカンドで登る最終手段としても十分活用できる。 セットは足用には上部にオートブロックに長いシュリンゲを掛け、腰用に先日陶ヶ岳でたまたま福岡の方がやっておられたのを見たガルダーヒッチを使う方法とした。これらを説明しデモ後全員に実技をやってもらった。
実技報告
総 括 悪天候の為これらの技術を適材適所に組み合わせ、さらにルート工作もしながら実際に搬出を行う救助隊向けの組織レスキューを行うことは出来なかった。しかし、基本システムを確実に修得することに関しては陶ヶ岳でなかった事が案外都合が良かったようで、各人たっぷりと実技を行うことが出来たと思う。 また、尻込みして見学者に徹する人もなく、積極的な姿勢がすばらしかった。次回は秋に予定されているようなのでさらに多くの参加者を期待したい。 |